―――カチッ……
時計の針が頂上に重なった。日付は20日から21日へと移動。
はらりはらり、舞い始める粉雪。それは段々と勢いを増し。
しんしんと降り積もる純白の雪。辺りはシルクのカーテンが掛かった様に、一面銀世界。息を吐けば吐息が白く、季節は冬真っ盛りだと知らせてくれる。
「冬…寒ない?」
「大丈夫」
牡丹雪が降りしきる中、身を寄せ合い佇む影二つ。景色を見るには、雪が積もりすぎで。
「そろそろ隊舎戻ろか」
あれから結構な時間がたっていた。頭には、ふわふわと雪が掛かる。
「市丸の部屋行っていいか?」
「ええよ」
優しく呟いて。差し出した大きな手に、小さな手が収められた。そして、二人仲良く明かりの灯る方へと歩いていった。
部屋に戻れば、暖房も点いていないのに暖かい。冷えた手は、チクチクと痛む。
適当に腰掛け、カサカサと音を立てながら手を摩った。
と、重なる唇。小さく座る少年を包み込む様に抱き締めて、冷えた手は懐へ案内する。
「ん…っ」
「ああ…こんなに冷たくなってもうて」
じわりじわりと伝わる体温。心が落ち着く、その温もり。
「暖めてあげんとな?」
ニヤリ。口角を吊り上げて。
「……優しくしろよ」
「努力します」
居間より奥に有る寝室へ移動して、中央に敷かれた真っ白な布団に身を委ねる。
同じ隊長の羽織を脱ぎ捨てて、着物、袴と順々に。
「愛しとるよ…」
「…知ってる」
「冬は?僕ん事愛しとる?」
「……さあ?」
子供のような無邪気な笑み。僕の可愛い子は、大きな瞳を真っ直ぐ向ける。
「苛めるで?」
「嫌いになるよ?」
「う……」
絡めた指は解かずに、頬には触れるだけの口付けを。そのまま、首筋を辿り鎖骨を舐め上げ、二つの小さな膨らみへ。
「んっ…」
ペロリと舐めれば甘い声が漏れてきて、時折強く吸ってやると、期待に蜜を漏らす小さなそれ。焦らす様にキスをして、首筋一杯に無数の花を咲かせた。
「市丸っ…」
「ん?」
胸元に顔を沈めている時だった。言いたい事は直ぐに判って。
我慢が出来ないのだろう…。でも、僕は言わない。
「冬、如何したん?」
「ッ――!」
「言わな判らんよ?」
瞳一杯に涙を溜めて、頬は真っ赤に染まっている。其れだけで、僕は興奮してしまった。
「し…下も……触ってッ」
「良く言えました」
甘い甘い蜜を垂らす其処をパクリと銜え、ぴくぴくと物欲しそうな蕾に指を這わす。
可愛い可愛い喘ぎ声は、何時しか熱の篭った嬌声に変わり。
「やぁっ…も、ダメっ…」
何時もの台詞。銜えた其れの先端を強く吸ってやれば、口内に広がる蜜の味。
「息、止めんといてな?」
「んぁっっ…やぁっ」
くちゅり。甘い声と共に聞こえる、水音。
「ここ、えらいヒクヒクしてんで?」
「やだっ…」
「可愛えな。一本じゃ足りひんやろ?」
ぐちゅ。更に入った二本の指。
バラバラに動かして、掻き回して。
僕の下で善がる彼が愛おしくて、優しく、優しく、解き解す。
「も…市丸の……欲しいっ…」
如何してこんな可愛い事を言うのか。僕の理性は、プツリと音を立て切れた。
「ふぁっっ…あぁっっ…んあっ」
大きく反り立った雄を蕾に宛がい、深く中へと突き入れて、僕の腕を懸命に握り締める少年の瞳から大粒の涙。
小さな体には、無理な事を承知の上で慣らしたとは言え、辛い行為。それでも僕を受け入れてくれるこの子が、愛おしくて堪らない。
「…大好きや」
「あっ、あぁ…ぅんっ…ぁっ」
「もっと…声聞かせて」
「やぁ…いち…まるっ…ああっ」
折れそうな程に細い腰に手を当て、深くへ。良い声が聞こえるように、善がる顔が見れる様に。
でも今日は、君の体温を感じていたくて。
腰に当てた手を涙で濡れる瞳の横へ、真っ赤に染まった顔を目の前へ。少年の、火照った体とピタリとくっ付ければ、スッポリと僕の体に隠れてしまう、小さな体。
何度も何度も口付けて、止まる事の無い、綺麗な涙。背中に回された手が、暖かい。
「市丸っ…も、だめっっ」
「ええよ。一緒にいこな…」
その言葉を合図に、律動を激しく、良いトコばかり突いてやり。
少年の体が小刻みに震えた。
「ふぁっっ、ああぁっっ……」
「っ…」
一際甲高い声を上げた日番谷。
小さな其処から、勢い良く放つ白濁の液。それは、二人の腹上を汚して。
達した事により、キツく締め付けられた市丸のそれ。ほぼ同時に、中へと欲を流し込んだ。
酒が入っているという事もあり、達した直後意識を飛ばした少年。起さない様に、体を綺麗にしてやり、寝間着を着せて布団の中へ。
すやすやと、気持ち良さそうに眠る恋人。乱れた髪を指で梳く。ふわふわと、柔らかな感触。
「おやすみ」
そう、呟いて。自分でも驚くほどの、優しい声。
『…俺にはお前しか見えてないんだ。浮気とか、意味分んねー事言うな』
眠る少年を見つめて、思い出したあの言葉。
嬉しくて、顔がにやけてしまった。と同時に、今まで溜めていた醜い感情も湧きあがってきて。
始めは一緒に居れるだけで良かったのに、段々と独占欲が強くなって。
僕しか見れない様に、閉じ込めて置きたくなる程。
大好きで、大好きで、彼が言った一言は、僕をそんな醜い沼から這い上がらせてくれた。
市丸は、日番谷の眠る布団へと身を沈めた。小さな体を離さぬ様、そっと抱き締めて。
君の温もり、甘い吐息。
全て僕のモノ。
冬の全部、僕のモノ。
目を閉じた先に見えるのは、昨日の宴会。
誕生日会が始まって、冬はやっぱりモテモテで。
ずっと一緒に居たかったけど、今日は彼の為の集まり。皆だって冬と話したいだろうし。
僕は成るべく冬を見ない様にした。
「おわっっ?!」
突然聞こえてきた、恋人の声。慌てて振り返れば、阿散井はんに押し倒された冬の姿。
これは流石にあかんやろ。
「はいはい、そこまで。阿散井はん、あっちで呑もなぁ」
殺してやりたかったけど。君が言ったあの一言が、僕を凄く安心させて。
朱に染まった可愛え顔をちょっとだけ見て、僕は卯ノ花はんの元へ行った。
その後も止まる事無く、冬に近寄る輩共。みーんな突き飛ばして、連れ去ってやろうか。
「ああ、アカン。大丈夫!心配あらへんっっ」
そう、自分に言い聞かせて。
ガヤガヤ賑わう宴会場から、僕はこっそり抜け出した。
あの子が、来てくれる事を信じて。
外へ出ると酷く風が冷たくて。
「そーいや、今日は雪降る言うてたな…」
懐に仕舞っていた真っ赤なマフラー。これは、僕の宝物。首に巻いたら、寒さなんて吹き飛んだ。
ゆっくり、ゆっくり歩いて。二人の思い出の場所。
初めて気持ちを打ち明けた場所。
初めてキスをして。
初めて手を繋いだ大切な場所。
冬もここは大好きだって言ってた。
辿り着いて直ぐ、近づいて来る愛しい霊圧。
「…待っとったよ」
「…このまま来なかったら如何するつもりだったんだ?」
そんな事はあらへん。君は来てくれる。
だって……なぁ。
「冬は必ず僕の所へ来てくれる」
「凄い自信だな」
「冬がくれたんよ?」
「何を…」
「自信」
僕は冬が大好きで、冬は僕が好き。
分かったから。
「誕生日、おめでとう」
やっと言えた、祝いの言葉。
「ありがとう…」
君の笑顔が見たかった。君と二人の空間が欲しかった。
やっぱり離れるのは結構辛くて。
僕の事、想ってくれてるんは嬉しいんやけど…。
「自信…ねぇ」
しん。と静まり返った部屋。
規則正しい寝息が耳へと届く。
君と出会ってからは、毎日が楽しくて。でも、一緒に居れない時は不安で潰れてしまいそうになる。
信じる。
口では簡単に言えるけど。
「もう少し素直になってくれたら…」
僕の心は落ち着く?多分無理。
そしたらきっと、それ以上に僕は我侭になる。
この世に生まれて、初めて出会った大切な人。
「大好きやから…無理やわ」
はぁ。末期やな。
来年も、君とこうして一緒に居れます様に。
「誕生日、おめでとう」
もう一度、愛しい彼へ祝いの言葉。
End
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