戻れない距離。忘れない誓い。
それは切ないまでの、永久の想い。

永久の愛



「冬〜wwこれ受け取って〜」

朝も早くから十番隊執務室に飛び込んできた煩い男。

「市丸?!帰ってきてたのか…」

迷惑そうな顔で市丸を見上げる。

「なんや、不機嫌な顔して」
「こっちは静かに仕事がしたいんだ!!」
「酷い!!久し振りの恋人の再会なんに…嬉しないの?」
「嬉しくない!煩いのが帰ってきて迷惑だ」

本当は今直ぐにでも市丸の胸に飛び込みたい。嬉しい…無事に帰ってきてくれて良かった。素直になれないのは、横にいる俺の副官に見られたくないから…

「ハァ〜なんか泣けてきたわ…」
「泣け!!そして帰れ!!」
「うわ〜んっ!!冬の鬼〜馬鹿〜外道〜!!」
「あっ!何言ってやがる?!馬鹿はお前だろ!!!」

久し振りに会ったのに可愛げの無い会話。今まで大人しく見ていたここの副官がやれやれと言った感じで仲裁に入る。

「隊長!!いい加減止めて下さい!執務の邪魔です」
「なっ!松本…」

一番言われたくない人に執務の邪魔と言われてしまった

「ほら、ギンも落ち着いて」
「乱菊〜」

取り合えず口喧嘩が済んだみたいなので、松本は暗黙の了解の如く、さも当たり前のように席を外す。

「おい、松本!!」

日番谷によって即座に呼び止められる

「何ですか?」
「何ですか?じゃねーよ!まだ書類残ってるだろ?!」
「あら、そうですか?でも、もう席立っちゃったし、戻るの面倒なので休憩して来まーす」

日番谷に向け最高の投げキッスを飛ばす

「ふざけんな!!今日中のもあんだぞ」
「ちゃんと戻ってきますって」
「…本当だろうな」
「信用してくださいww」

無理だ…

「あ、ギン、隊長に渡したい物あるんでしょ?」
「へ?あぁ!ヒートアップしすぎて忘れてたわ」
「間抜けね〜」
「…十番隊は口の悪い奴しか居らへんのか…」

松本はゆっくりと襖に手を掛ける

「ふふ。受け取って貰えるといいわね」

そう一言残すと松本はあっという間に姿を眩ました。



「で、俺に渡したい物って何だ?」

真っ直ぐに市丸を見つめる。市丸はその瞳に優しく微笑み返すと袖から小さな何かを出してきた

「これ…受け取ってくれへん?」
「……?」

市丸の手の中にはスッポリと納まる小さな箱。

「冬…手、出して」
「手?……こうか?」

日番谷の雪の様な白く細い手を包み込む。そして、指をとり、小さな薬指に通され…

「……ピッタリやww」
「これ…」

市丸は満足そうに日番谷の指を見つめる。

「そ、指輪や。可愛いやろ?」
「市丸…」

下を向いてしまった日番谷だが、耳までは隠せず顔が朱に染まっているのを隠せない

「なぁ、僕にもはめてww」

そう言うと市丸は再度袖から同じ箱を取り出した。

「冬とお揃いなんよ」
「え…」

心臓がドクリと高鳴った

「早く〜」
「わ、分かったよ」

日番谷は市丸の手を取り同じ様に指輪をはめた。よく見れば、それはお揃いの細工がしてあるシルバーのリング。

「これ、お互いの石の色違うやろ?」
「…本当だ」
「冬のには僕の瞳と同じ赤い石。僕のには冬の瞳と同じ翡翠や」
「あ……」

お揃いの指輪。恥ずかしいけど、嬉しい。今は、俺をからかう副官が居ないから……素直になれる。

「ありがとう…」
「うん。永久の愛の誓いや」
「永久の愛…?」
「そ、例え僕達が離れ離れになる事があってもこの指輪は二人を繋いでくれる」

市丸の表情が突如暗くなる。その時の俺は嬉しさで一杯になり、市丸の表情の変化と言葉の意味を分からないでいた。

「僕は冬の側から離れても、ずっと愛しているから…忘れたりはせぇーへん…」
「市丸?泣いてる?」
「せやね…その指輪はめてる冬見たら泣けてきたわ」
「なんだそれ…」

漸く笑った日番谷の顎をゆっくりと持ち上げる。徐々に近づく市丸の顔。日番谷はそっと瞼を閉じた。




今、漸く市丸の言っていた言葉の意味を理解した。でもそれは、あまりにも遅すぎる感情で…。






俺は今、現世に居る。藍染の裏切り。破面から俺等の世界を守るため。

『例え僕達が離れ離れになる事があっても……』

市丸から聞いた最後の言葉。

「やっと分かったよ…市丸」

『この指輪は二人を繋いでくれる』

永久の愛の誓い。

「俺も愛してる」




たとえ遠く離れても、俺の心は変わらない。俺にはもうお前しかいない。だからずっと誓える。お前を愛してる。と

「寒ぃ〜…」

もう直ぐ春だというのに外に吹く風は酷く冷たい。

「…市丸…一人はやっぱ寂しいよ」

つい弱音を吐いてしまう。
ふと窓の外を見ると、日は沈み夕日が日番谷を照らしていた。

「市丸…」

何度も何度もお前の言葉を思い出す。

『ずっと愛してるから』

お前と離れて、初めて‘側に居る大切さ’が分かった様な気がする。今直ぐその大きな胸で抱き締めて、暖かい温もりを伝えて欲しい。忘れる前に、早く。

「指輪…はめてるからな」

今も輝きを忘れない誓いのリング、今は大切なお守り。この指輪がある限り俺の心は揺るがない。




遥か遠い空の下に居る愛しい君。空を見るたび君の笑顔を思い出す。最後に見た君の瞳に映った僕はどんな顔しとった?僕は一生懸命表情を作ったんよ?辛い顔したら君は僕を追いかけては来てくれないだろうから。

「冬…風邪引いてへん?」

下界は冬から春に変わる頃。

「指輪…まだはめてくれてる?」

あの時誓った揃いのリング。

「僕の事想ってる?」

忘れないで欲しい。

離れ離れになって、幾つもの月日を重ねて。また愛しい君に会えたなら、一度でいいから笑顔を見せて。





「市丸…俺はお前を愛してる。永遠に…」





「冬…ずっと愛しとるよ…。僕の気持ちは変わらへん」




それは切ない思いが交差する、儚い儚い誓いの言葉。

End


読みにくいorz

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