本当に久し振りな二人の時間。
夜間なら毎日の様に一緒だけど、昼間から、しかも執務室以外で君と二人で居られるなんて。
『何時も非番の時は何してるん?』
前に一度だけ聞いた君の休みの過ごし方。
『大概は部屋に籠って読書だな。疲れる事はしたくねぇし』
見掛けの割りには爺臭い事を言う子供だな。
そんな事を思ったせいもあってか、その台詞が凄く印象に残ってる。
だから、なんか嬉しい。
ただフラフラと歩いてるだけなのに、幸せで顔が歪んでしまう。
「あ、あそこ!」
「ん?」
死魄装を脱いで、今は誰がどう見てもラブラブな恋人同士!
丁度、瀞霊廷の繁華街に来た時だった。少年の指差す先には人だかり。
の、更に奥に。
「大道芸してはるみたいやね」
「凄いな」
大きな瞳をクリクリさせて、その表情はまさに子供。
ほんま可愛えな。そう思い、小さな彼を覗き込んでいた。
グイッッ――。
「わわっ!?」
突然だったから思わず変な声を出してしまった。
ペタペタペタ。
パタパタパタ。
二つの足音が人込みに向かう。
「ふ、冬〜?」
「早くっ!終わっちゃうだろっ」
グイグイと僕の手を両手で掴み、その場へ急ぐ。
君から握られた事の無いこの手は、熱があるんじゃないかと思う程温くて。
何てうぶなんや、自分。
恥ずかしい位に心臓がドキドキする。
「ぅわ〜。梯子の上で良くあんな事できるな〜」
この子が本当にあの日番谷冬獅郎なのかと疑ってしまう位に、彼の瞳は輝きを増していた。
「……見えない」
「ああ、下に降りてしまったみたいやね」
ヒョイッ。
「うわっ?!」
「これなら、よう見えるやろ」
「うん、見える。ありがと」
普段ならきっと蹴散らされるであろう肩車をして、少年は引き続き大道芸を見入っている。
「終わっちゃった…」
「楽しかったな」
人込みも無くなり、肩から少年を降ろす。
まだ見たかったのか、覗き込んだその顔はつまらなそうに膨れていた。
可愛いななんて思っていたら、再度伝わる暖かな温もり。
「市丸、次あっち行こ」
「ん…ああ、そやな。慌てたらあかんよ」
きっと今の僕は恥ずかしい位に真っ赤な顔をしていると思う。
横に並ぶ恋人。
右手は遠くの店を指し、左手は…
僕の右手を握り締めて。
「……幸せやなぁ」
「何か言ったか?」
「なぁ〜んも言ってへんよ」
僕は一人微笑んで、黙って君の手を握り返した。
End
ほのぼの好きす。
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