お前の影が、俺を捕らえて 放さない。

残像



裏切り者。
確かにそうかもしれない。

今は空の彼方へと消えた貴方。
俺の回りは存在すらも忘れたかの様な落ちで。

否、

忘れた。
と言うより、むしろ始めから存在していなかったのではないか。

それならどれだけ心が救われるか。



今でもお前は、俺の中で鮮かに生きている。





「っ市丸……」

消えそうな程に小さな声で。

今は夜。
少年は一人、月明りの入る室内で外を眺めていた。



ガサッ……。
布の動く音、そして擦れる音。

「はっ……ぅん…」

甘い吐息と漏れる蜜声。クチュリ、小さな指の間から透明な液が指を伝い落ちる。

「あっ、はぁっ……市丸っ…」

壁に寄り掛かり。
上へ下へと己を慰めて。

零れる涙は貴方のせい。

目を瞑り、暗闇に浮かぶ貴方の影。開ければ涙に揺らぐ貴方が見えて。

「ふぁっ……ぃ…くっ」

小刻みに震える体。
吐息と共に吐き出された白濁が、ツツゥ―……音も無く腹部を流れ落ちた。

「っあ、はぁっ…はっ」

少し荒めの呼吸を落ち着かせ、乱れた衣服を整えて元通り。

また一人窓の外を眺める。

「っ……」

貴方の存在は日に日に大きくなるから。最後の日まで、絡めた指は暖かかった。

籠った熱が貴方をもとめ、明日もまた一人虚しく果てるのか。

「…もぅ……ゃだ…よ」





貴方の残像が



俺を





孤独にする。

End



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