誰もが寝静まる丑三つ時。
ヒタリヒタリと廊下を歩く男が一人。腰には刀を下げ、カチャリカチャリと音を出す。
ある一室の前。
その男は立ち止まり、襖へと手を掛けた。
スゥ―…。
開けられたそこから体を潜らせ、足音を立てない様に室内へと進んで行く。
視線の先には眠る少年。
布団より顔と小さな掌を出し、昼間とは違うその幼い寝顔を隠さず、寝息を小さく熟睡していた。
「冬獅郎…」
枕元へと屈み込み、少し大きめの声で少年を起こす。
「ん…藍染?」
大して待たずに直ぐ起きた恋人は、眠そうに瞼を擦りながら身を起こす。
頬にキスをしてやり、擽ったそうに身を縮める少年。
そのまま抱き締めて、君は僕の腕の中。
「こんな時間に如何したの?」
当然の質問。
でも、僕はその言葉を待っていたんだ。
「僕はもう君の側には居れない」
「え?」
顔を上げ、今にも泣きそうな表情を見せる恋人。その頭を撫でてやり、さらに抱き締める。
「それでも君を愛してる」
「藍…染…?」
不振がる少年を自身に寄せて、強く、強く抱き締めて。
「君を失いたくは無いんだ」
だから…。
―――……。
「え…?」
日番谷の背には光る何か。それは藍染の手に握られた、斬魄刀。
血を吸った刀はだくだくと床へと鮮血を溢し色を付けて。
ダラリと力無く、細腕は床へと垂れた。
「綺麗だ…」
反応なんて返る筈も無い体を愛で、柔らかな髪を指で梳く。
開いたままの瞳を閉じてやり、白い頬にキスを落とす。
「やっと、君を手に入れた気がするよ」
藍染の口許は至極嬉しそうに裂けていた。
君を失うくらいなら
殺してしまえばいい。
そう、
簡単な事だ。
End
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