完璧な嘘



塗り重ねた偽りを真実にするなんて、無理に決まってる。

そう思わないかい?

何故って、僕は嘘が嫌いなんだ。
ギンみたいな生き方をしてる奴等には吐き気がする。
嘘を吐いて得たモノなんて虚しいに決まってるからね。

高みを望む僕にそんな薄っぺらいモノなんて必要無い。



『――…日番谷君』



僕が愛して止まない彼は、たった今、僕の手によって地へと体を沈めてゆく。
それは余りにもゆっくりで、時が止まってしまったのではないかと錯覚するほど。
鮮血を纏った彼はとても綺麗で、僕の為だけにヴェールで身を飾っている様だった。

僕は、今から君とは違う世界へと行く。この世界では叶わない至高の場所へと。

この日の為に、君に繰り返し告げた言の葉。遠くを見る君の視界を塞いだ、あの言葉。



『愛してる』



何度も言う様だけど、僕は嘘が嫌いだ。だから当然の事、僕の素直な気持ちを彼にぶつけたんだ。
戸惑いに揺れる翡翠は初めだけ徐々に視線は僕へと向けられ。

自惚れなんかじゃない。確実に、君は僕のモノへと変わっていった。

そう、変わっていったんだ。
まだ完全にではない、今は変わっている最中なんだ。

手助けをしてあげるよ。

ほんの少しの切欠で君は変わる。僕に相応しい恋人に、ね。



さあ、準備は整った。



館を埋める氷壁に、眩しい位に鮮やかな血飛沫。僕の愛刀は嬉しそうにその赫を呑んでいた。

虚ろな眸は何を映しているのか、その奥は何を考えているのか。

ああ、手に取る様に判るよ。
君は僕の事を考えているね。

そうさせたのは、僕自身。

狂言ではないさ。
繰り返した『愛してる』腐りきったこの世界が、言葉だけで互いを繋ぎ止める惨めな手段。
腐りきったこの世界に居た僕が告げれた、最高の手段。



全ては、



君を僕のモノにする為の完璧な……――『嘘』

End


完璧な嘘は真実に値する。
わけが無いですよね。はい、スイマセン。

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