護廷十三隊には基本的に「休み」なんてものは無い。どの隊も毎日の様に書類や討伐に追われ、慌しく日々が過ぎて行く。
最近その十三隊に新しく就任した隊長が一人、まだ幼さの残る天才児と誉れる少年だ。
慣れていても正直音をあげそうな膨大な書類にも愚痴一つ溢さず、自分よりも倍以上年の離れた隊員に慕われ。
そして……。
「隊長vV今日も一段と可愛いですね!」
「ほんまに可愛えわ。ギューーってしてええやろか?」
「こらギン、止めないか…」
子供とは到底思えない程の綺麗な顔立ちは、大人一人を夢中にさせるには十分な魅力。
僕は、そんな君に恋をした。
男が男に惚れるなんて。
本当に馬鹿馬鹿しくて笑ってしまう。気付いた自分自身、疑いたくなるほど。
それでも君を見かける度に膨れ上がるこの感情は誤魔化せなくて、思い切って君に告白をしてみた。
「……あ?」
返ってきた返事は酷くあっさりと。
「本気なんだ」
「いや…本気って……」
当然の反応だと思う。覚悟はしている。
避けられるか拒絶されるか、はたまた無視か。
それでも、この想いを君に伝えたかった。
「藍染…熱あるのか?」
「無いよ」
「頭…打った?」
「打ってない」
執務机に座ったまま、僕のこの想いを聞いた少年は困り果てている。
「別に返事なんて貰う気は無いよ。ただ伝えたくて…ね」
そう言って藍染は執務室を出て行ってしまった。
「……そっか」
一人残ったこの部屋で、椅子から降りて窓の外を眺める日番谷はポツリ独り言。
何を考えているのか、うんと一回頷くと日番谷もまた部屋を出て行ってしまった。
「藍染」
十番隊より自隊に戻ろうと廊下を歩いていた。そこで、先程別れた少年の声が聞こえて。
「日番谷君……なに?」
「いや……さっきの…まだ信じれないんだけど」
「さっきの?……ああ、あれか。忘れてくれていいんだよ」
君の困った顔なんて見たくないし、なにより側に居辛くなるのが一番問題。
この気持ちはもう心の底に沈めよう。
「もう聞いた。嘘なんて駄目だからな」
「え?」
「お前の気持ち、ふざけてる訳じゃないんだろ?」
「ふざけてなんて…」
下から睨み上げられて。
グイッ!羽織の裾を力一杯引かれた。そのまま前屈みになって、僕の目の前には頬を赤く染めた君の顔。
「俺も」
「日番谷君?」
「俺もお前が好き」
正直、耳を疑った。
あの少年が自分を好きだと言った。
ずっと悩んできたあの気持ちは一体なんだったのか。
「……本当かい?」
何時からこんなに臆病になったのか。
僕は恐る恐る確認して、するとぎこちなくはあるが少年の首が小さく頷いた。
嬉しくて、僕はここが廊下だという事を忘れて君に抱きついた。
拒絶なんてされない。
回される腕が真実だと教えてくれて。
「嬉しいな…」
後から話を聞いて知った事。
日番谷君は霊術院生時代から僕の事を想っていてくれたらしい。
悩む必要なんて無かったんだな。
僕はそんな事を考えて、小さく笑った。
End
二人の馴初め的な感じで。
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