僕が知らない貴方の話を聞いた。

そこに貴方の笑顔が見えたから。
僕以外の人にそんな顔しないで。

ほら、また僕の黒い感情が湧いてきた。

それは紛れも無い独占欲で……

勘違い



「……痛っ」
「だから力抜かな」
「無…理…あぁっ」

市丸の指は日番谷の蕾にすっぽりと収まっていた。

「指二本でこれじゃ僕の入らんで」
「やぁっ、…ひぃっ」

クチュクチュと生温い音を立てながら、市丸は袴を脱ぎ捨て日番谷のソコヘ自身の欲を突き入れる。

「ああぁっ……いゃ…ああぁぁっ」
「キツ…冬、力抜いて」
「あっあぁっ…やだ…無理ぃ」

久し振りだから仕方が無いか…。市丸はそんな事を考えながら、でも日番谷のあの行動を許せず動かす腰を休めようとはしなかった。

「冬が悪いんやん。訳聞かせて貰わんと止めんよ…」










あれは、市丸率いる三番隊と六番隊とで現世に虚討伐に行った日の事……。

「市丸隊長、俺、日番谷隊長の事が好きなんすよ」

虚も消え、尸魂街へ戻ろうと門を開ける時だった。

「…へ?」

何を言ってくるんだ……。突然の事で声が裏返ってしまった。

「何ですのいきなり…珍しいなぁ」

目の前に立つ赤髪の男…六番隊副官の阿散井恋次。

「市丸隊長はよく日番谷隊長と一緒に居られるので、相談に乗って貰えたら嬉しいなぁ〜なんて」

阿散井はへへへと照れ笑いをし、頭を掻く。…腸が煮えくり返るかと思った。
が、市丸は笑顔を崩さず、疑問を問いかけた。

「相談ねぇ…。ところでなんで日番谷はんの事好きになりはったん?」

阿散井の顔が見る見る内に赤くなっていった。

「恥ずかしいんすけど、きっかけは…日番谷隊長と資料室で二人っきりで話をした時なんです」








「阿散井?珍しいな…なんでこんな所に居るんだ?」

机の上に自分よりも高く積み上がった本の間から、覗き込むようにこちらを見る少年。

「日番谷隊長こそどうされたんすか?」
「あぁ、現世の行事事で調べたい物があって」
「行事っすか」

ここは資料室といっても過去の記録等が全て仕舞ってある場所。でかさと言ったら半端ではない。そんな所に居る日番谷は何時もにも増して小さい。

「現世の事なら俺、結構詳しいっすよ」
「本当か!」

日番谷の目が輝く。大きく開いた翡翠の瞳に吸い込まれそうだ……。

「じゃあ、バレンタインって知ってるか」
「バレンタイン?!」

この人の口からこんな言葉が出るとは思わなかった…。笑い転げそうになるのを堪え、呼吸を正し答える。

「バレンタインってのは、女が日頃恋心を持っている相手にチョコレートを渡して、自分の気持ちを素直に打ち明ける日なんです」
「女が…か」
「そう」

日番谷の顔が暗くなる。

「どうしたんすか?」

暫くの沈黙の後、意を決したかの様に話し出す。

「お…男が渡すのはおかしいか……」
「……はい?」
「やっぱりおかしいよな……」

明らかにシュンとする。
……可愛い…っは?何考えてんだ俺!相手は男だぞ!…でも、抱き締めたら気持ち良さそうだなぁ…。って、馬鹿か俺!!!

「阿散井?顔赤いぞ?」
「あ、すんません。…で、男がチョコ渡したって良いと思いますよ」
「本当に?」
「はいww」

…やべぇ…俺マジで隊長の事好きになったかも…。ところで、隊長は一体誰にチョコを渡すんだろう…
気になる…よな…。まさかとは思うけど……。

「あのぉ〜、隊長は誰にチョコを渡すんすか?」
「えっ、…」

日番谷の顔が引き攣る。

「勿論、男に渡すんすよね?」
「…あぁ……」
「それって―――」

俺に?と聞こうとしたその瞬間。

「わぁ〜!言うなぁ〜恥ずかしいだろ〜!!!」

そう言いながら顔を赤くさせた日番谷は、資料室を飛び出していってしまった。

「えっ、マジで俺に渡す積もりなんじゃ…」








「って訳なんすよ」

一通りの粗筋を話し終えると満足そうに微笑む

「……ふぅ〜ん」
「どう思います?」
「………」

反応が無い。だが、阿散井は市丸の霊圧の変化にも気付かずお構い無しに話を進める。

「あ〜どうしよう…俺の気持ち早く伝えた方が良いっすかね」
「……まぁ、そんな急がんとバレンタインまで待ってた方がええんちゃう?」
「そうか…そうっすよね!!」

阿散井の顔がパァ〜っと明るくなる。

「有難う御座いました!やっぱ市丸隊長に相談してよかったっす」
「又何かあったら相談してな。特に日番谷はんの事なら大歓迎や」

=解錠=

誰一人として怪我もせず、皆一様に晴れ晴れとした気持ちで帰路に着く。
そう、たった一人を除いて……。


『許さへんよ…お仕置きやなぁ……冬』








「ハァ……」

市丸早く帰って来ないかな…。

「隊長ったらさっきから溜息ばっかり!」

朝からこの調子の日番谷に、流石に痺れを切らしたのであろう十番隊副官の松本乱菊が怒りを露にする。

「えっ!あ…悪ぃ」
「らしくないですよ!一旦外の空気でも吸ってきたら如何です?」

丁度良かった。もうそろそろ市丸が帰って来る頃だ。……出迎えにでも行くか。

「悪い。ちょっとだけ席外させて貰うな」

日番谷は一人、目的地に向け歩いていた

「確かここら辺……あっ!!」

丁度その時、門が開き三番隊と六番隊が帰って来た。待ちに待った人が帰って来た!日番谷は浮き立つ足を押さえ付けその人を待つ……が、

「え……」

目は合った。お互いの存在も分かっているのに…。市丸はそのまま自室へと歩き出してしまった。

「…?体調でも悪いのかな」



声が聞けないのはやっぱり寂しい。日番谷は市丸の部屋の前に立っていた。

「市丸…居るのか?」

声を掛ける…が、返事は無し。ゆっくりと襖を開ける

「……冬…待っとったよ。入り」

中に入ると、そこには市丸がやはり何時もの笑みで座っていた。

「なんだ。体調が悪いわけじゃ無さそうだな」
「なんや、心配でもしてくれたん?」
「馬〜鹿。ちげーよ」

だけど、本当は安心した。何時もの市丸だ……よな?

「そんな所に突っ立っとらんと、こっち来ぃ」

……怒ってる?

「何ビクついてるん?」
「別に…なぁ、何か嫌な事でもあったのか?」

「……正解」
「!!!」

ヤバイ…と思うが遅く、日番谷は市丸に押倒されてしまった。市丸によって組み敷かれた体は動きを封じられ、次に訪れるであろう快楽を待っている状況だった。覆い被さっている市丸の表情が逆光で見えない。寂しい…思わず手を伸ばすと、いきなり市丸の顔が目の前にきた。そのままゆっくり、ゆっくりと首筋へと顔を埋める。

「え……?」

耳元で何か言われた…。上手く聞き取れない…。再度市丸の口から言葉が漏れた。

「なあ、冬は僕のとちがうん?」
「い…ちま…る……」

近くで見た市丸の目は怒りによって真紅に染められていた。



「嫌ぁっ、無理……入らなっ…」

十分に慣らされてない蕾へ、市丸は無理やり反り立つ雄を挿入し抉じ開ける。

「あぁぁっ、痛っ…やだぁっ…」
「ほら、冬、言わな止めんよ」
「何…分か…んな…い」

市丸が何を聞きたいのか見当も付かない日番谷は、ただただ揺さぶられ、甘い、事情の声を上げるしか出来ないでいた。

「なんや、自分が何したかも分からんの?」

日番谷は小さく頷く。その翡翠の瞳に涙を溜めて…。

「資料室で阿散井はんと会ったやろ?そん時の話や」
「――!」
「言ってみ…」
「違っ、あれは…」

想像もしなかった事に思わず言葉が詰まる。

「何が違うん?」

市丸は自身をギリギリまで抜くと最奥まで一気に突上げる。

「ひっ、ああぁぁっっ!!!」

…怖い。阿散井から何を聞いたのか分からないが、今の市丸は完全に違う意味で怒っている…。

「んあっ、話す…話すから…」

腰の動きがピタリと止まる。

「ほな、聞かせて貰おうか…」

日番谷はまだ繋がったままのソレを抜き、自分の死魄装を掴み中をがさごそと探り出す。

「あった……」
「何ですの…それ」

日番谷の手の中には可愛くラッピングされた小さな箱があった。

「チョコ…」
「え…」

酷く間抜けな顔をしてしまった。

「この間の事はテメーの勘違いだ。阿散井から何を聞いたのか知らねーが、俺は怪しまれる事なんて一つもしてない」
「……」

市丸は日番谷の手からチョコの入った箱を貰う。

「堪忍な…。てっきり阿散井はんにチョコ渡すんかと思うて」
「馬〜鹿」

完全なる勘違い。

「ほんまや…馬鹿だね僕は」
「判ればいいんだ」

日番谷は腕を組みフンっと鼻で息を吐く。

「開けていい?」
「あぁ」

箱の中にはハート型に模られた小さなチョコが一杯入っていた。

「本当はバレンタインに渡すつもりだったんだけど」

頭をポリポリと掻きながら照れた様に言う。

「……冬」
「ん?」
「続き…しよか?」
「え…」
「感謝の気持ち、言葉では言い表せへんから…体で、な」
「……優しくしろよ」

「大好きや…冬…ありがとう」

End


サイトを作って始めて書いた小説です。色々と読み辛い。

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