「暇じゃ…」
自室の縁側にどっかりと座った総隊長が、茶を啜り髭を愛でながらもどこか遠くを見て呟く。
「はぁ…ですが折角頂いた休暇。ゆっくりされたら如何です?」
側に付き添う雀部が新たな茶を注ぎながら返事を返す。
「う〜む。……そうじゃ!」
「……総隊長殿?」
「あれじゃ!前から考えておったあれを実行しようと思う!」
「はぁ…あれ、ですか」
やれやれと言った感じで腰を上げた雀部は、しかし反抗すると自分が面倒な事になるので素直に隊主室を離れた。
総隊長の考えなど知る由も無い、ここ十番隊舎は何時も以上の賑わいで平穏な時間を過ごしていた。
「こら、冬獅郎っ好き嫌いは駄目だぞ!」
「俺はお前の子供じゃないだろ!指図すんなっ」
「せや。冬が嫌って言ってんのわからへんの?」
「市丸っテメーは黙ってろ!」
「こら!テメーなんて汚い言葉、使ったら駄目じゃないか!」
「せや!傷付いてもうたっっ」
「市丸っっテメッ……くっ」
部屋中に響く怒鳴り声は、ここの隊主・日番谷と恋人の市丸、父親…もとい、十三番隊長の浮竹の三人のものであった。
「はっはっはっ。十番隊舎は相変らず賑やかですな」
突如、入り口から笑い声が届き三人は一緒に其方へと振り返る。
「ゲッ…雀部はん……」
勘の鋭い市丸は既にその何かを察知したか、徐に嫌そうな顔をする。
そんな市丸を無視して雀部は話を進める。
「折角、浮竹隊長から休暇を頂いたのですが総隊長は時間を持て余しておりまして」
「そうか…」
ふむ。と浮竹は困った表情。
「ちょ、ちょっと待て!浮竹…総隊長を休ませたのか…?」
「そうだよ。此処暫く体調が良くてね、たまには親孝行じゃないけど総隊長を休ませてあげようと思って」
「……最悪だ」
話を聞いた途端、日番谷は机に突っ伏してしまった。それを不思議そうに見る浮竹を哀れむ市丸。
「で、今回は何の用なん?」
訝しげに市丸が問う。
「いやいや、そんな睨まないで下さいよ。今回は浮竹隊長と日番谷隊長のお二方に用があるんです」
「俺と浮竹…に?」
「そうです。一緒に総隊長室へ来て頂けます?」
「……?ああ…」
取り合えず、隠し事は許さへんとギャアギャア煩い市丸を宥め、俺と浮竹は雀部に連れられるまま部屋へと着いた。
「失礼します。申し付け通り、二人を連れて参りました」
「うむ。ご苦労」
ペコリと頭を下げた雀部は素早く部屋を出て、ここには総隊長を入れた三人が残った。
「あの…呼ばれた理由は…?」
「ん?一緒に茶でも如何かと思っての」
「は?」
「一人とは味気無いもんでの。折角なら儂の可愛い教え子と孫に囲まれて休みたいと思ってのぉ」
「……いや、え?それだけ?」
「そうじゃ。何かあるのか?」
「いえ…」
拍子抜け…。思わず溜息が漏れた日番谷は、自分の事を孫呼ばわりした総隊長を突っ込む事もせず大人しく横へ座る。
「フォッフォッ。いや、最高の休日じゃ」
「そうですね。元柳斎先生」
「……はぁ。書類溜まってんのに」
「ん?何か言ったかの?」
「いえ…」
まぁ…今回は茶を飲むだけで済んだんだから良しとするか。
でもやっぱ総隊長の気まぐれには毎度頭を悩まされるな。
End
日番谷は総隊長の孫と信じてる痛い管理人でした!
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