「おい、市丸。何で今日も朝からここに居るんだよ…」
場所は変わって、ここは十番隊執務室。
「冬が浮気せーへんか見張るためや」
「…お前、可哀相な奴だな」
はぁ〜っと溜息を吐き、自分の横にピッタリとくっついて離れない三番隊隊長の市丸を哀れな人を見る様な顔付で見上げる。
「酷っ!!冬が悪いんやん」
「何で俺が悪くなるんだよ!」
「そんな可愛い顔して自覚無く皆に愛想振りまくからやん」
市丸は真剣な面持ちで日番谷を非難する。
「やっぱり市丸は馬鹿だったんだな」
「な、なんやて〜!!」
また始まったよ…何時もの事だとただ傍観していたここの副官が、流石にこのままだと自分の隊長がヤバイと思い、制止に入る。
「ちょっと、止めなさいよ二人共」
良くぞ言った!!と言わんばかりの日番谷の視線。
「ギン!あんたは執務の邪魔!帰んなさい」
「最悪や〜乱菊までそんな事言う〜」
2対1ではどう考えたって市丸の負け。ガックリと肩を落とし、自分が用意した席へと戻る。
漸く静かになった執務室に一つの声がかかった。
「三番隊副官、吉良イヅルです。市丸隊長は居られますか?」
助かった!これで落ち着いて執務に専念できる!!そう言葉に出そうと身を乗り出した時…。
「そんな人居らんよ〜。出直してな〜」
「?!?!」
何言ってんだコイツ!思わず胸倉を掴んで絞め殺しそうになった。が、その手よりも早くスパーンッ!!と効果音が大袈裟ではない音を立て、物凄い勢いで襖が開いた。
「市丸隊長ー!!」
「ヒィーッッ」
之には流石の俺もビビッてしまった…。
「さあ、馬鹿な事言ってないで戻りますよ」
奴に逃げ場は無かった。トボトボと執務室の出口へと向かう…と、
「ハハハ。市丸隊長も暇でしたか…いや、良かった」
声がした方へ視線を送る。
「雀部副隊長…」
三人の目の前には満面の笑みを浮かべた一番隊副隊長の姿。
「どないされはったんです?」
「ハハハ。総隊長がお呼びですので、至急集会場へ向かって頂きたい」
「全員ですか?」
「はい。隊長・副隊長両名です」
集合を伝え終えると、そのまま雀部は帰って行った。
「ったく、こっちは忙しいってんだ!!」
市丸のせいで本日分の書類を未だ一枚も目を通していない。日番谷は眉間に皺を寄せながら集会場へ向け廊下を歩く。
「直ぐ終わりますよ」
「だと良いんだけど……」
集会場に入ると、既に全隊が揃っていた。
「皆の衆よう集まってくれた」
総隊長を中心に各隊が扇状に列を成す。
「最近は大きな討伐も無く、皆の体が鈍っておる」
「「はぁ……??」」
ここにいる全員が不思議そうに突発発言ジジィを見る。何故かと言うと、実際、大きな討伐は無いとしても毎日の様に各隊が現世へと派遣され、毎回隊長か副隊長が引率として付いて行っている。体が鈍るわけが無い。しかし本人はそんな視線はお構いなしに話を進める。
「護廷十三隊とも在ろう戦闘部隊が、いざと言う時に体が鈍ってまともに戦えないのでは話にならん!!」
ダンッと杖を床に叩き付け熱弁する。
「よって、之から皆の衆に体力勝負をしてもらう…」
「「体力勝負ぅ〜?!?!」」
皆は一斉に眉間に皺を寄せ怪訝そうな顔をする。
「ふぉふぉふぉ。まぁ、良く聞け。今からするのは、ただの体力勝負ではないぞ」
次にくる言葉が気になる……。
「題して!!護廷十三隊、隊長・副隊長による、逃げなきゃ死ぬよ☆鬼ごっこ対決〜!!」
「「!!!!!!!!!!!!!」」
最悪だ…このジジィ、とうとう頭が逝かれてしまったらしい…。集中する哀れみの眼差しを、羨望の眼差しと勘違いしているらしい総隊長は満足そうに辺りを見渡す。
「鬼ごっこをする場所の準備は出来ておる。さぁ、行こうか」
「ちょっ、総隊長!」
「ん?藍染か、どうした?」
総隊長が椅子から立ち上がり歩き出そうとしている時だった。
「私達は決して暇ではありません。それは総隊長もご存知でしょう?」
「……何が言いたいんじゃ?」
一気に周りの空気が冷やされていく。
「ですから、こんな事している暇は無いと言っているんです」
良く言った!!頑張れ藍染〜!!皆の気持ちは一緒だぞ〜!!
「藍染よ…今、こんな事と申したか?」
「え……」
ヤバイ…とってもヤバくなってきた…。
「儂が折角お前達の事を思って提案した事を、こんな事と言いおったな」
はっと思い視線を総隊長の後ろへと向けると、そこには…不動明王の如く轟炎が渦を成し徐々に辺りを侵食し始めている所だった。
ご愁傷様です。藍染隊長…皆は、バレない様にそっと手を合わせた。
総隊長が轟炎を纏い段々と近付く…。
「あ、いや…ああっ!!やっぱり運動したくなってきたな…」
ハハハ。と頭を掻きながら藍染は必死で弁明する。
「そうか!!運動したいか!なんじゃ、早く言えば良かろうに」
「ですよね〜……」
誰から見ても明らかに引き攣ったその顔に、全員思わず失笑する。
「では、その意思を呑んで、運動がしたい隊長等は逃げ役を、副隊長等は鬼役をやってもらう」
「なんでやねん!!」
突然割り込んできた怒声に皆は目を丸くした。
「おかしいやん!!なんで僕等も走らないかんの!藍染はんだけ走らせれば良いんちゃうん?」
今まで大人しくしていた市丸はここぞとばかりに非道な事を言って除ける。
「ギン!酷いじゃないか……僕を…裏切る気かい?」
藍染の眼鏡が怪しく光る。
「……。日番谷はんは運動したい?」
「なんでこっちに振るんだよ!!」
「僕は冬と一緒ならなんでもするんや」
「だから!巻き込むな!!」
隊長等の微妙な擦り合いが続く中、後方に構えていた副官等もざわつき出す。
「おい…どーすんだよ。隊長なんか捕まえらんねーよ」
「そうだね…。僕なんて普段ですら市丸隊長を捕まえられないのに…」
「…吉良、苦労してんな……」
ポンッと肩に手を沿え阿散井は優しく頷いた。気を緩めたせいで自分の気持ちがつい口に出る。
「はぁ〜日番谷隊長と話せるチャンス…無ぇーよなぁ〜ライバルも多いし…市丸隊長がピッタリ離れないし…」
「え…?何か言ったかい?」
「いや…何でもねーよ」
阿散井はフゥ〜と息を吐き今から始まる大騒動に向け調整を始める。
「付いたぞ。ここが会場じゃ」
盛り上がる副隊と納得の行かない表情の隊長等を引き連れある場所へと着いた。そこは廃墟が建ち並ぶ今はもう誰も居ない荒地。
「まずは、ルール説明から。雀部、頼むぞ」
「はい。では、始めに審判員を二番隊と一番隊とでやります。砕蜂隊長宜しいでしょうか?」
「……好きにしろ」
砕蜂は雀部にそっぽを向け冷たく返事を返す。
「続けます。四番隊は救護をお願いします…」
その言葉を誰も聞き逃しはしなかった。明らかにざわつきだす。
「おい!救護って何だよ!そんな危険な事すんのか?!」
声を張り上げ文句を吐いたのは日番谷だ。
「隊長・副隊長のガチンコですよ?子供の遊びではないんです」
「テメー!!俺を餓鬼扱いしたな!!」
…どうやら、雀部は禁句を言ってしまったらしい。
「ほらほら、日番谷はん。そない怒ったって疲れるだけや。あの人達に何を言っても無駄やで」
全身の毛を逆立て、フーフー唸る日番谷を宥める。
「ふぉふぉ、市丸も賢くなったのぅ」
「…おおきに」
冷めた視線が飛び交う。
「続けます。逃げ役は一切の縛道・鬼道を禁止します。鬼役は、下級縛道・鬼道は使用可。そして両役とも斬魄刀の使用禁止及び瞬歩の禁止、そして、霊圧は消さないように」
「参ったね…これじゃ僕等は鬼道が当らない様に逃げるだけかい」
やれやれと言った感じで京楽が呟く。
「ふざけんな!俺達は鼠じゃねーんだよ」
今だ怒りが治まらない日番谷は尚も口を挟んでくる。
「全く、隊長共は煩いのう。ちょっとは副官を見習え」
後ろを振り返り副官を見ると、全員下を向き、なのに顔はニヤけ緩んでいる。そりゃ、そーだろうとも……隊長等に日頃の鬱憤をぶつけれるのだから…。
「おぉ!そうじゃ、儂の話を大人しく聞いていた副官等に褒美をやろう!」
まだ何かあんのかよ…もう、勘弁してくれ……。
「総隊長…褒美とは、何ですか?」
褒美の一言に松本が食らい付いた。
「聞き逃すでないぞ。褒美には、お主等が捕まえた隊長等を一週間好きなように使っても良い事にする。つまり、多く捕まえた者が得と言う訳じゃ」
「元柳斎殿、其れは酷すぎでは…」
総隊長に従順な狛村もつい反論する。
「既に決定事項じゃ。反抗は許さぬ」
「…分かりました」
…なんか、最初と思考が変わってきていませんか?しかし、その疑問を口にする者は既に居なくなっていた。
「おい…聞いたか?」
「うん。バッチリ」
「捕まえた隊長を一週間好きに出来るなんて…」
「僕は絶対市丸隊長を捕まえて仕事してもらうぞ」
吉良のガッツポーズは本気だ…。
「え〜。私は藍染隊長と一緒にデートしたいなぁ」
「あんたらしいわね。私だったら一週間休暇貰うわ」
「……シロちゃん可哀相」
「嘘よ!本当は二人で温泉でも行きたいな」
「いいですね!!シロちゃん温泉好きだし」
副官等の目が一気に輝きを増す。
「ところで、檜佐木さんはどうするんすか?」
「え?俺?…秘密だな」
「あ、ズリ〜」
「阿散井こそどうすんだよ?」
「へへ…秘密っす」
二人は意味深に微笑む。
「はっくしょん!!」
「冬、風邪引いたん?」
「いや…突然悪寒が…」
「なんやて?!」
市丸はその悪寒の正体を何となくだが、付き止めた。その方向へ目をやると、予想通り二人で話し込んでいる。
「狼が居るなぁ。やっぱり冬を一人には出来へん…」
「ん?市丸なんか言ったか?」
「何でもあらへん」
「…へんな奴」
日番谷は首を傾げながら市丸を見つめる。
「もう、そんな顔したらあかん!!狼が増える!!」
「はぁ?何だよ狼って…」
「何でもあらへん!!兎に角、約束や!守ってな」
「…なんだよ…意味分かんねぇ……」
眉間に皺を寄せ日番谷は拗ねてしまった。辺りは今だ騒がしい。
「静粛に!始めるぞ。終了時刻は日没まで。それでは頑張ってくれ!」
総隊長の合図と共に全員が一斉に散らばった。
「ったく、どうしろってんだ…」
「ほんま、面倒くさいわ」
市丸と日番谷は取り敢えず辺りを見渡せる様に廃墟の屋根へと飛び乗る。
「縛道の一……」
気を抜いた時だった。後方より声がする。
「危ない!冬、霊圧上げて!!」
「―――ッ」
声と共に向かってきた光の線は日番谷が霊圧を上げた瞬間弾ける様に消え失せた。
「あ〜あ。もう、ギン邪魔しないでよ」
そこには酷く残念そうな表情の松本がいた。
「市丸!後ろ!!」
「な、なんや?!」
突如日番谷が市丸の後ろを指差す。
「破道の三十一・赤火砲!!」
「!!!!!!!」
「き、吉良ぁ!?」
「イヅルの阿呆〜!!!」
チュドーン!爆音が辺りに響き渡る。
「誰か捕まったのかな?全く、僕は早く研究の続きがしたいヨ」
マユリ様は木の上で見物のご様子。
「マユリ様……」
「おお、ネム。私に鬼道をぶつけたら解体するヨ」
「……うっ」
「!!どうしたんだい?…ネム?」
突然ネムは動かなくなってしまった。徐々に足元から崩れていく……。
「壊れたのカネ?返事をしたまえヨ」
反応が無い。本当に壊れたのだろうか…マユリ様は少し不安になり倒れたネムの側へ下り立つ。
ガシッ……!
「……捕まえました」
「?!」
ネムの頭上へと下り立った瞬間だった。
「十二番隊隊長・涅マユリ失格!」
「なっ!!」
どこにいたのか、気付けば砕蜂が失格の判定を下していた。
「ななな、何だと?!私が失格?ふざけるんじゃないヨ!!」
マユリ様は全身を震わせ講義する。
「私に意義を申し立てるのか?そうか…ならば総隊長に報告せねば…」
「ば、馬鹿な考えはよし給えヨ!判ったよ、失格なんだろ!行くよネム!!」
「はい…マユリ様」
と言うわけで、開始十分でマユリ様退場。
「ふ〜ん。その手があったわね……」
木の陰で微笑む者が一人…。
「十二番隊長さんが捕まったみたいだね」
「そうだな、儂等も気を付けねば」
廃墟より少し離れた荒地の岩陰に東仙と狛村はいた。
そこへ、良く知れた霊圧が二体近付いてくる。
「東仙隊長!大変です。総隊長が!!」
血相を変えた自隊の副官が駆け寄る。
「檜佐木と射場か…総隊長とか言っているぞ」
「何かあったのだろうか」
岩山の手前で二人が止まった。
「隊長!競技どころではないっす!早く出て来て下さい」
「狛村…何か大変そうだよ?」
「罠だ!罠に違いない!!」
「そうだね。でも、取り敢えず総隊長の霊圧を確認しよう」
――――――。
「駄目だ…周り中が一気に霊圧を上げていて総隊長のがハッキリしない…」
「仕様が無い…あの二人を信用しようではないか」
「ああ」
岩陰から二人が出て来る。
それを見計らったかの様に檜佐木と射場の目の色が変わった。
「「縛道の一・塞!!」」
「?!」
「「隊長捕まえましたー!!」」
唐突な出来事に隊長二人は呆然とする。
「捕まえたって…総隊長は?」
「へへへ。嘘です」
褒めても無いのに照れた素振りで返答をする。
「嘘って…僕等を騙したのかい?」
「え……」
「そのやり方は正義に反するな…」
「……隊長?」
「君は悪の道を貫く者なのかい?」
「いや…その…」
捕まった事より嘘を吐かれた事に対して怒りが込上げ、二人を詰問する東仙は既に卍解に値する程の霊圧を発していた。
「ふぉふぉ、副官の作戦勝ちじゃ。お前等は負けたんじゃ、清く認めぃ」
「総隊長!!」
怒りに気が行っていたせいで総隊長の存在に気付かなかった。
「……判りました」
「元柳斎殿がそう言われるのであれば認めなければなるまい」
「ふぉふぉ、では、七番及び九番隊長、捕獲終了。即ち失格じゃ!」
「ハア……」
開始十五分、隊長二人が失格になった。
残るは七人……
「フゥ〜やばかったな…総隊長のおかげで助かったぜ」
「そうじゃのう。ところで、檜佐木は引き続き誰かを捕らえるんかい?」
「勿論です!此れからが本番ッすよ」
「頑張るのう…儂は一旦休ませてもらうきぃの」
「はい。じゃ俺行きます」
話もそこそこに檜佐木は急ぎ足で目的地へと向かう。
「日番谷隊長は絶対俺が捕まえる!!」
一方、檜佐木が異様なまでの気合を纏いながら此方へ向かっている事を知らない日番谷は…。
「松本!テメー俺を殺す気か!!」
「私は、隊長が他の人に一週間も犯されるのは嫌だから頑張ってるんですよ?」
「犯すって何だよ!?」
「大丈夫!私は優しくしますからww」
「馬鹿!!ふざけんなー!」
日番谷はスタート直後から付いて離れない松本を如何にか振り払おうと必死に走る。
「乱菊、ええ加減違う隊長はんの所へ行きや」
「私の隊長追っかけて何が悪いのよ!」
「私のちゃう!!僕のや」
「市丸!馬鹿な事言うな!俺はだれの物でもねぇ!!」
「恥ずかしがらんでもええのに〜可愛えなぁ冬は」
逃げる日番谷、追う松本、の後ろから何故か付いて来る市丸……の後ろに、
「市丸隊長〜!!大人しく僕に捕まって下さーい!!」
「イヅル…しつこいわ〜」
そう、忘れてはならない人、一番切実に隊長を追う吉良がいた。
「破道の三十三・蒼火墜!」
「!!!」
俟たしても爆音と共に眩い光が奔る。
「死ぬか思うたわ…イヅル、中級鬼道を使うなんて反則やで!!」
「う……」
フワリと風が横切る。
「ふぉふぉ、反則は駄目じゃて」
「……はい」
穏やかな表情の総隊長が目の前に現れた。
「残念じゃが、三番隊副隊長・吉良イヅル、反則の為失格!!」
総隊長自身、普段からの吉良の苦労は良く知っている…。見逃したい気持ちは山々だが自分で決めたルールを曲げる訳にはいかない。
「イヅル〜ほな、さいなら〜」
「ああっ、隊長〜…」
市丸は意気揚々とこの場を去った。
「吉良よ、早く成長して己が隊長になれ。そうすればこんな苦労をしなくて済むぞ」
「……はい」
首をガックリと落とし吉良は失格者の集まる場所へと向かった。
「あれ?吉良君じゃないか…なんで君がここに??」
失格者が集うその場所へ行って見れば既にほろ酔いの京楽隊長がいた。
「ハァ…。余りにむきになりすぎて市丸隊長目掛け中級鬼道使っちゃいました」
「あはははは。君らしいね」
吉良の話を聞き大笑いする京楽の横に少し拗ねた感じの浮竹隊長がこちらを睨んでいる。
「どうされたんですか?」
「聞いてくれるかい?酷いんだよ、八番隊の連中がね……」
「私は悪くありません!!」
浮竹の言葉を静止したのは、眼鏡を光らせた八番隊副官の伊勢七緒だった。
「兎に角!私は親友に騙されたんだ!お蔭で冬獅郎と一緒に走りまわれなかったよ」
「はいはい。落ち着いて…」
暫くの間、浮竹の愚痴をその場にいた全員が聞いていた。
「なるほど…七緒さん考えましたね」
「実は、ネムさんからヒントを頂いたんです」
「ヒント?」
「はい。弱ったふりをしたんです」
「なるほど!京楽隊長は七緒さんにベタ甘ですからね」
浮竹の話を簡潔に纏めると、京楽の目の前で七緒が腹痛をおこし、それを可哀相と思った京楽が近付きアウト。それに気付かず心配になった浮竹も近付きアウト!と言う寸法でした。
七緒ちゃんの作戦勝ち!!
「は〜。それにしても後の人頑張ってますね」
「そうだね。確か、後四人残ってる筈だよ」
「四人?五人じゃなくてですか?」
この場にいる隊長は…浮竹、京楽、マユリ、東仙、狛村…の五人
今だ逃げているのは…市丸、日番谷、朽木、藍染、更木…の五人
「やっぱり、五人ですよ?」
「あぁ、更木君は既にスタート直後から捕まっていたんだよ」
「えっ!!そうなんですか?」
「うん。まぁ、やちるちゃんから逃げれる者はいないって事さ」
「ははっ…」
失格者の楽し気な笑い声とは裏腹にこちらは激しく激突の最中…。
「朽木隊長!!あんた何真剣に逃げてんすか?!」
「お前如きに捕まるのは、私のプライドが許さん」
「酷ぇ…」
こちら六番隊の主従二人。先程の朽木の言葉が癇に障り恋次は卑怯な手だとは知りつつ最終手段へと取り掛る。
「お父さん!!ルキアを俺に下さい!!」
「!!!!!!!!!!!」
「実はもうCまで済ましてあるんす」
「?!?!??!?!!?????」
「返事を聞かせて下さいお父さん!!」
朽木の足が止まった。
「…恋次、お前と言う奴は…冬獅郎だけでは足らず、ルキアにまで手を出したのか…」
「そうです!!」
「そうか…そんなに死にたいか…良かろう。私が貴様を葬ってやる」
一気に霊圧が上がる。
「…卍解…」
思惑通りだ!!
「た…隊長!!山本総隊長!!」
風が横切る。
「ふぉふぉ、六番隊隊長・朽木白哉、反則の為失格!!」
「な……この私が失格…」
と言うわけで、そろそろ日も傾き始める頃に惜しくも白哉、失格・退場!!
「ふ〜危なかった…」
取り敢えず朽木を総隊長に任せ恋次は霊圧を探り目的の人が居る場所へと向かう。
「うわあ〜っ!!何で増えてるんだよ?!」
今だ捕まらずに逃げている日番谷。当たり前だ…今自分の後ろにいるのは全員日番谷の体目当ての奴ばかり。
「ははは。日番谷君僕の胸に飛び込みなさい!!そうすれば絶対捕まらないよ」
「ふざけんな!!そっちの方が恐ぇーよ」
「冬〜何時もみたいに僕の腕の中に入り〜」
「何時もって何だよ?!馬鹿!!」
何故か藍染も加わりお互い逃げ役なのに会話が白熱している。
「藍染隊長〜待って下さ〜い」
最高の笑顔で後を追うのは雛森だ…。
「雛森君!いい加減諦めてくれないか…私は忙しいんだ」
「駄目です!!私には隊長を捕まえる任務があるんです!!」
「………チッ」
俄に藍染の霊圧が変わった。
「雛森君…余りしつこいと君を嫌いになっちゃうよ?」
「えっ…」
「ああ、残念だ…君は良い副官だと思っていたのに…」
「そんな…嫌です!!私、藍染隊長の側に居たいです」
「だったら私の言う事を聞いてくれるね…」
「はい!!では失礼します!頑張って下さい、藍染隊長」
上手い様に言い包められ、雛森・戦線離脱!!
「おっさん、最悪やなぁ〜。雛森ちゃんが可哀相や」
「ははは。今のは普段からの信頼関係がものをいったんだよ…ギンには到底真似出来ないね」
「癇に障るおっさんやわ〜」
そんなこんなで、もうそろそろ終了の時刻。もう直ぐ終わる…日番谷はホッと胸を撫で下ろす…が、新たな鬼が意気揚々と此方にやってくる。
「日番谷隊長〜」
「げ、阿散井…」
安心しきっていた日番谷はその男の顔を確認すると今からが本番なのだと思い知らされた。
「恋次!!」
「あ、檜佐木さん!」
「やっと来たわね!恋次」
「松本さんも!!」
ヤバイ…今この状況で、副官三人が団結して鬼道をかまして来たら絶対捕まる…。
「あっ!……」
と、突如日番谷は閃いた。この、自分の体を狙っている副官に捕まらず、尚且つ安全に逃げるのを止めれる方法。それは…
「やちる〜!!珍しいお菓子があるぞ〜!!」
「「?!?!」」
突然日番谷が声を張り上げた。と、共に凄まじい勢いで小さな影が皆の前を横切っていった。
「わ〜い!!どこどこ?お菓子ドコ?」
「こっちだ!俺の手を触ってみろ!!」
日番谷の作戦に早くも気付いた者が一人。
「やだ、隊長、やちるに捕まる気だわ!!」
が、時既に遅し。
「お菓子ないじゃ〜ん。チビの嘘吐き!!」
「あ!ごめん、現世に置いて来てしまったんだった…これ終わったら取りに行こうな」
「うん!!」
というわけで、日番谷・失格!!
残された者達は余りの急展開に頭が付いていかず、ただ呆然と終了時間まで佇んでいたらしい…
End
意味の分からない終わり方になってしまった
取り合えず、市丸と藍染は誰にも捕まらなかったので今まで通りの一週間を、過したらしい。ひっつんはやちると剣八さんと現世デートをしました。
因みに、朽木隊長は恋次に嘘付いた事を怒らないでと命令され渋々従っております
<< Back