「お前が好きだ」

おかしい。
俺の頭はどうしちまったんだ。

「俺と付き合え」

気呆げな表情に覇気の無い姿勢、人を小馬鹿にした言動と不摂生な食生活。
全てにおいて苦手とする人物像で、当然、俺の周りにはそんな奴は存在しなかったんだ。

ある日、あの出会いが俺の人生を狂わせた。
最初こそ顔を合わせるだけで神経を逆撫でされて、むかっ腹立ってたって言うのに。
そのモヤモヤする心の何かは奴に対しての拒否から来るものだと単純に考えていた。

「お前以外誰も見ないから」

日毎に奴との接点が増えるにつれて、モヤモヤする心は慣れるとは対照的に増幅する一方。
寝ても冷めても考えるのはあの透通る銀髪と、物事に関心を示さない、あの真紅の瞳。

時機にそれが苛立ちや毛嫌いでは無く、寧ろ好意を示すものなんだって気付いた。

「だから、俺の側にいろ」

俺はうだうだと考えるのは苦手だ。
一方的な感情だとしても、この想い、伝えずには居られなかった。



何時の日か、お前も俺と同じ想いになればと淡い期待をして。

僅かなモノに敏感なお前は俺を好きだと認めるしかない



「多串君は俺に喧嘩売ってんの?」

眩い朝日を浴びて、俺の愛しい銀髪は揺ら揺らと光を吸い込み輝いていた。
その清々しい一面とは裏腹に、たった今吐き棄てられた言葉は地を這いドスの利いた声。

「あ?何キレてんだよ」

俺は一週間ぶりにコイツと会えた事に安著し、膝枕を強要して一人リラックス。
心地良い雰囲気を壊された事に眉間の皺を深くして、俺を見下ろすコイツを睨み付けた。

「お前、俺しか見ないって言ったじゃん」

言ったよ。ああ、確かに言ったさ。
実際、今もお前しか見えてねえし。それの何が不満だってんだ。
俺は心の中だけでそう呟き、表面は無表情を装った。

だって、男とはそういうもんだろ?
あんな恥ずかしい言葉、何度も言えるもんか。

「別れよっかなー」
「……切るぞ」
「はいはい。出来るもんならどーぞ」

ったく、人が折角穏やかに眠ろうとしてたのに。
膝枕の心地良さが台無しだ。お前が悪いんだからな。

その気呆げな瞳を俺で埋めて、その生意気な口は俺だけしか呼べない様にしてやろうか。

「止めてくんない?」
「うるせー。お前が悪い」

首筋に噛み付いてやった。
真っ白なそこはくっきりと俺の歯形を浮かび上がらせ扇情的。
痛そうに顔を歪めるコイツの顔が更に興奮を掻き立てる。

抵抗しないって事は、このまま事を進めても良いって事か。
大した余裕じゃねーか。その余裕綽々な面、何時まで拝めるもんやら。

「さっきの言葉取り消さねーと、どうなるかわかってんだろ?」
「知らねーよ。つか、退け」

なんだ嫌だったのか。
そうかそうか、それなら無理矢理するまでだ。だって、俺の睡眠を妨げたのはお前なんだから。

「ッ―――痛ぇ」

適当に指を舐め、無造作に下孔を押し広げた。
ヤバイ、鼓動の高鳴りが煩い。どんだけ興奮してんだよ。
コイツも同じだったら良いのに、なんて口が裂けても言わねーけど。

一週間ぶりの行為に俺のモノが早くしろと急かす。

「痛くなる様にしてんだ。ほら、訂正しろ」
「うっせ。これ以上やったらマジで別れっからな」
「上等だ」

内心不安が襲ったが、これで止めたら完全に奴の思うツボ。今まで俺が築いてきたアレやコレが全て水の泡。
アレってのはつまりアレだよ、天秤?みたいな。お前が俺を好きなのと俺がお前を好きなのが平等に吊り合う様に、な。勿論、外面的にだぞ。内面なんて計り知れないくらい一方的に恋してるっつーの。

だから、あんな台詞一つに振り回されるなんて絶対にあっちゃならねー。

「んっ……は、ぁ」

クチクチと音を立てながら中を犯し、その間も反対の手は先走りを滴らせるモノを扱く。
物欲しそうに口を開いたと思えば、すかさず唇を重ね舌を絡める。歯列をなぞって吸い付いて、涎を垂らせばそれを掬い上げて舐め取った。

ゆっくりじっくりと時間を掛けてやったんだ。痛いことも不愉快な事もしていない。だから別れるなんて認めない。

ほら、気持ち良いだろ?俺が欲しいだろ?
早く言っちまえよ。不安で頭が重いから、頼む。

「臭ぇ……」
「……は?」
「白粉の匂い、嫌いなんだよ」
「お、白粉?」

マジで泣きたい。
俺が求めていた言葉なんて一言とも聞こえず、代わりにこの雰囲気には似つかわしくない言葉が艶めく唇から吐き出された。

「散々遊んできたんだろ?お前の息子にも休暇が必要だって」
「遊ぶって……んな暇あったらテメーん所行くっての」
「あーあーどうだか。実際、そんな匂い撒き散らされたら説得力ないから」





成程。

そうか、だからお前不機嫌だったわけね。
そうかそうか、なんて可愛いんだ。ああ愛おしい。





「ひッ……んああッ………!」

我慢が出来なくて、俺は盛った雄を下孔に捻じ込んだ。
解したとしても指と一物では子供と大人程の違いがある。呼吸も出来ないほどに苦しむ表情だけで熱を開放しそうになった。

「ッ、締め付けんな」
「く、あ…ぅ、最悪……」
「はっ、良さそうにしといてそりゃ無いんじゃねーの?」

痛いのか気持ち良いのか、腰をくねらせ俺の腰に纏わり付く白い足。
スラリと伸びた腕は首にしがみ付いて爪を立てて、額から頬に伝う汗がキラキラと日の光を反射する。

キラキラキラキラとそのまま消えてしまいそうな錯覚。
俺は無意識に指を絡め、離れない様にと覆い被さった。

「苦しい痛い重い熱い」
「……俺の側にいろ」
「はぁ?なんなのその命令」
「命令か……そうかもな」

深く浅くを繰り返し、アイツがイイと言う所を集中的に押し当てる。善がりながらも可愛げの無い台詞を吐くコイツの口を塞いだ。

「ん、……ふッ」

揺すられながらも口付けを受け、汗が流れる頬は幸せそうに色付いていた。

「は…ぁ、ん」

時折漏れる声は普段到底想像出来ない位の妖艶さ。
絶頂はすぐそこ。熱を吐き出したくて限界。

「いやっ…ああぁッ」

覆い被さっていた体制をクルリ回転させて、四つん這いにさせる。
ガシリと腰を掴み、一際激しく中を掻き回す。

「あっ、は…ぅ、いああッ……」

腕に力が入らないのか、カクリと肘を曲げ顔を枕に埋める姿は何度見ても優越感を味わえる。
されるがまま動かされ喘がされ、必死にシーツを掴むコイツをつい抱き締めたくなってしまう。

最初こそ俺一人の恋慕事に巻き込む形だった筈が、気づけば相思に相愛にと色を変え。
『白粉の匂い』なんてまるで嫉妬でもしてくれてるのかと、コイツの中で俺は特別な存在になってたのだと舞上がってしまった。

なあ、この白粉を付けた奴の事気になるか?
これはな、今朝方お前に会いに行くために歌舞伎町を歩いていた時についたものなんだ。
店を放り出されたオヤジにぶつかられて付いたんだと思う。それだけなんだ。それだけの薄い匂いにまで反応してくれるお前が愛おしくて堪らないよ。

「気持ちいいか?」
「ああッ、い、い……も、ダメ…!」

小刻みに震えだす下孔。
先走りが溢れるソコに手を添えれば、限界まで反り上がっていた。

「いく前に、言う事があんだろ?」
「んぁッ……な、に」
「別れるなんて嘘ですって、ほら」

グリグリと先端を捏ね回す。でも出せない様に竿を握り締めて。
銀時は小さく悲鳴を上げた後、何かを言おうと薄い唇をゆっくり開いた。

「……な、い」
「ん?聞こえないぞ」
「い、わない、から……」
「何を、だ?」
「別れる、なんて言わない、から……早くッ」

ああ、なんて可愛い。
素直に従って快楽を求めて、俺に縋る姿だけで先にいきそうになった。

「中に出すぞ」

一層激しく奥を突いて、握り締めていた手を解いて、

「んぁッ…ああぁぁッ!」

ドクドクと一週間分の熱が中に注ぎ込まれる。
布団には同じく、一週間分の白濁が吐き出され。

息の上がった二つの体は雪崩れ込むように布団へと突っ伏していった。

「俺の勝ちだな」
「……言ってろ」

悔しさからか、俺の方を一切見ようともしない。
荒い呼吸に動く肩に揺れる髪。今出したばかりだと言うのに元気を取り戻しつつある我がムスコ。

「もう一回やらせろ」
「死ね」
「体力ねーな」
「ほっとけ」

まあ、本当に辛そうだから今日はこの位にしてやるよ。
でもそっぽを向かれたままなんて納得いかねえ。

「んッ……!」

向けられた背中に抱きついて、上から顔を覗き込む。そのまま唇を重ねて自由を奪って、更に肩を掴んで反転させれば、俺の方に体を向けて悔しそうに睨みつけるコイツと目が合った。

「今日は嬉しい事あったからこれで許してやんよ」
「何だよそれ」

今度会う時も白粉の匂いを付けて来ようか。
必死に隠す嫉妬の眼差しをもう一度拝んでみたいだなんて、口が裂けてもテメーには言えねーけどな。

End



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