昨日の快晴が嘘の様だ。

デート日和



今日は早朝から降り出した雨が、昼を越えた今も降り続いている。

俗に言う土砂降り。
傘を差しても無駄だと言わんばかりに風までも手助けする始末。

常日頃に暇と戦っている万事屋は、当然、この雨のせいで客足が無い。
同居人の神楽は定春を連れ豪雨も関係なく元気一杯飛び出して行き、毎日真面目に通勤してる新八はと言うと、参ったと両手を挙げて元々存在しない有給休暇を取っていた。

「あー参ったなぁー」

雨は嫌いだ。
湿気は天パの大敵だもん。

「こんな大雨じゃパチンコにすら行けやしねぇ」

気分を紛らわす娯楽さえも疎まれる天気。
こうまでなると、やる事成す事全てが上手くいかない気がして滅入る。










ピンポーン―――――…










この大雨の中、外に出る変人も居たものだ。
常日頃鍵の掛かってない万事屋は、そこの住人であれば百も承知と呼び鈴なんて鳴らさない。

つまりは珍客。もしくは、余程切羽詰った鬼気迫る依頼主。
どちらにせよ今日は全てが面倒臭い銀時にとって、今そこに居るであろう客は迷惑以外の何者でもなかった。

「万事屋銀ちゃんは本日休業ですよー」

言ってはみるが、声は小さく。
そんな声は客になんて聞こえるわけがない。

動くのも大きい声を出すのも疎まれる。
外で風に煽られた雨が衣服を濡らそうが関係ない。

諦めて帰るのをひたすら待つ。





ガララッ―――!





乱暴に開けられた引き戸の音にドカドカと横暴な足音。

「うわぁ……図々しい客だなおい」

気怠げに持ち上げられた頭が玄関へと向き、その招かれざる客を見据える。

「居留守とはとんだ営業姿勢だ」

俺の目の前に居たのは、濡れ狗なんて言葉が似合いの真っ黒な眼垂れ野郎。只でさえおもっ苦しい隊服が雨に濡れて更に色を濃くしていた。

「居留守じゃなくて、今日は休業日なんですぅ」
「休業なんて何時もの事だろうが」
「失礼だなぁ。なに、営業妨害ですか」
「妨害もクソも今日は休みなんだろ?」
「あー言えばこー言う。多串君は心狭い男だね」
「……チッ」

何だかんだキレながらもドカリと腰を落としたのは、俺が寝転ぶソファーの上。

「おい、向かい側座れよ」
「良いだろ別に」
「俺は良くないんですけど」
「俺は此処が良いんだ。文句あっか」

悠々と寝転んでいたスペースが圧迫され不愉快。
文句あるから言ってるのに、全く聞く耳を持たない男に溜息しかでない。

渋々、これ以上言い合ったところで代わることはないだろうこの位置に、本当に渋々と銀時は体を起こした。
それを横目に満足そうな顔を見せる土方。

全く、雨の日はろくな事が無い。

「で、一体何しに来たのさ」
「まあ、なんだ。あれだな」
「何言ってんの?」
「あれだよ、アレ」
「……オイオイ痴呆には早すぎんじゃねーの?」
「誰が痴呆だ!喧嘩売ってんのかコラ」

土方が何を言いたいのか皆目見当のつかない銀時は、自分が言った言葉にムキになる彼に哀れみの視線を一心に送っていた。
それに気付いた土方も居た堪れない空気に無造作に出した煙草を乱暴に吹かし、落ち着かないのか小刻みに膝を揺らしている。

「………だな」
「あ?」
「だから久し振りだって言ってんだよ」
「何が」

何故か一人だけ顔を茹蛸にしている姿に、銀時は意味が判らないと首を傾げるしかない。

「……デート」
「―――!」

さっきまでは一人だけ顔を染めていたはずなのに、今、この場に居るのは二人のの茹蛸。
言葉の意味を否応無しに理解した銀時は、今や土方以上に顔を染めている。

「バッ…馬鹿だろ!」
「うっせー」
「なに?なんなの中学生めッ。一緒に居るだけでデートだなんてどんだけ初心なんだよ」

恥ずかしさに捲くし立てるように言葉をぶつけるも、肝心の土方は何かに観念したのか反論の言葉は返らない。

「仕方ないだろ。大体、こんな日でもないとお互い時間作れねーんだからよ」
「……あ」
「夜は毎晩の様に会えるかも知れねーけど、昼間なんて道端で擦れ違うくらいじゃねーか」

真剣な面持ちに思いの篭った言葉。
こんなオッサン二人がなにやっちゃってんだと冷静に思う反面、そこまで自分との関係を考えてくれていたのかと嬉しく思う気持ちもある。

恥ずかしい。本当に恥ずかしいんだ。
だけど、この雰囲気は嫌いじゃない。

「じゃあ……このままデートを楽しみますか」

さすがに面と向かっては言えなかったけど、少しだけコイツに甘えてみるのも良いかもしれない。

「素直だな」

大雨の日なんて良い事ないけど。
こうやって恋人らしい時間を過ごせるのなら、明日まで続くという雨も悪くないなと思えてくる。

「今日だけだぞコノヤロー」

大雨こそが、
俺達のデート日和。

End


我が家の銀さん乙女街道まっしぐら。

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