僕と君の思い出

特別な日々


毎日が記念日。

3月10日



ダダダダダダダダッッッッッ――……スパーーーーーンッッ!!!!!!!

騒音ともいえる足音がピタリと止まり、襖が勢い良く開け放たれる、ここは十番隊執務室。

「ふっ、ふふふ冬ーーーー!!!」

血相を変えた狐が一匹、部屋に飛び込んできた。

「市丸っ?!どうしたんだ」
「大変なんやっ!一大事やっっ!!」
「だから何だよ??」

今この部屋には隊主の日番谷と、たった今駆け込んできた市丸の二人。
もう言うまでも無い副官は書類を届けるといって以来行方不明。

唐突な来訪に驚く暇も無く、ゼーゼーと息を切らす市丸に茶を淹れてやる。
市丸が汗をかいているからと、少し温めの茶を。

「は〜っっ生き返ったわ。冬が淹れたお茶は天下一品やね」
「煩い。で、一大事ってなんだ??」

頬ずりしてくる狐を一掃し、一大事って位だから執務か何かの話か。日番谷は真剣な面持ちで問い掛ける。

「………落ち着いて聞くんやで?」
「ああ」
「慌てたらあかんよ」
「……うん」


「…あんな」


日番谷より向かいのソファーで口を開く市丸。膝の前で両指を組み、顔は真面目。

ゴクリ…。
一時の静寂に響く、喉の動く音。



「3月10日や」


…………。


「あ?」
「あ?ちゃうで。今日は3月10日や言うてんねん」

そう言って、市丸は腰掛けていたソファーから離れ、日番谷の横へ……と言うか、前に屈み込みその小さな体を抱き締める。

「市丸っ?!」
「冬…ほんま大好きや」

抱き締める力を少しだけ弱め、向かい合った二つの顔はそのまま距離を縮め重なって。
絡めた唇から漏れるは甘い声。舌を絡ませ、向きを変え、突然の口付けにも拘らず日番谷も市丸の首に腕を回し答える。

長い口付けも終れば二人の間には銀糸の曲線が繋がって、離れる事を惜しみながらも透ける様に消えていった。

「今日は僕と冬の日。二人だけの特別な日や」
「恥ずかしいヤツ」

End


小さな事でも記念日に出来る男の人って………面倒臭いですね(笑)

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